慢性便秘症
過敏性腸症候群
機能性胃腸症

腸にまつわる超すごい話 の不思議な関係

東北大学大学院医学系研究科 行動医学分野 教授/東北大学病院心療内科 科長 福土 審 先生

その4 健やかな腸を育むのは空腹の時間?

空腹でも腸は動いている

 腸は、胃から食べ物が送られてくると、消化や水分の調節をしながら出口(肛門)へ運んでいきます。この動きは、伸びたり縮んだりする不規則なもので、蠕動(ぜんどう)運動と呼ばれています。
 では、食べ物が入っていないときはどうなのでしょうか?実は、空腹でも腸が動く時間があるのです。空腹になった直後、腸はしばらくは動きませんが、やがて短い間隔(1 分間に10 回以上)で強く縮んだり伸びたりするようになります。
 空腹時におなかが鳴るのは、このときの動きが原因なのです。

空腹時の胃と腸の収縮運動

空腹時の胃と腸の収縮運動を測定した図

Stanghellini V, et al. : Gut. 28(1): 5-12, 1987.
福土審, 内臓感覚 脳と腸の不思議な関係,p.79,2016,NHK ブックスより作成

「空腹の時間」の大事な役割

 空腹時の腸の運動には、重要な役割があります。それは、食べ物の残りカスや人体にとって有害な細菌などを順々に外に送り出して掃除をするということです。有害な細菌は食べ物の残りカスを腐敗させたり、有益な細菌に悪影響を与えたりすることがあるので、こうした腸の運動は、からだを守る大切な役割を果たしているといえるでしょう

腸の調子を保つには

 つまり、健康な消化活動を保つためには、掃除の時間(空腹の時間)をきちんと確保することが重要なのです。よく言われる「夕食をなるべく早めに済ませる」「真夜中の夜食は避ける」というのは、食事と食事の間に空腹の状態を作り、しっかりと掃除をするためでもあるのです。「1 日3 食を決まった時間にとる」「間食は控える」などが推奨されるのも、同じ理由です。

健康な腸を表すイラスト

 ここまでご紹介してきたように、なじみが深いはずの腸には意外な側面があり、とても大切な臓器だということがおわかりいただけたかと思います。おなかの中は直接目にすることはできませんが、健やかな毎日のためにここでの話題を思い出しながら、「腸の調子」に耳を傾けてはいかがでしょうか。

【腸の中の「川」-粘液のはなし】

監修医の福土審先生のイラスト

 腸を輪切りにすると、断面はバウムクーヘンのように何層も重なった形をしています。その最も内側にあるのが、粘膜と呼ばれるものです。粘膜には粘液を分泌する細胞があり、粘液は粘膜の表面を川のように常に流れています。腸の中は食べ物だけではなく、細菌やウイルス、寄生虫、毒素など、からだにとって有害なものも通るため、粘液が粘膜の表面を流れるというしくみもからだを守るためのメカニズムの一つなのです。