自治医科大学内科学講座 循環器内科学部門 教授 苅尾 七臣 先生
排便時のいきみは便秘患者さんの多くが訴える症状のひとつです。
トイレで強くいきむと、血圧が急上昇し、心筋梗塞や脳卒中などを引き起こすことがあります。
毎日の血圧とお通じの状態を一緒に記録してみませんか?
どんなお通じの時に血圧が上がるのか、把握することができます。
お通じと血圧の記録の仕方をご紹介します。
- 便の硬さと回数
- 便の硬さ別に、その日にあったお通じの回数を記入します
(便の硬さは下記のスケールを参考にしてください) - 気になる症状
- 排便時のいきみ、残便感、おなかの張りなど、気になる症状があれば記入します
便の硬さ〈ブリストル便形状スケール〉
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硬便 ① うさぎの糞のように硬くてコロコロした便 ② ソーセージ状だが、固まりの多いでこぼこした便 -
正常 ③ 表面にひび割れのあるソーセージ状の便 ④ なめらかでやわらかいソーセージ状、
あるいは蛇のようなとぐろを巻く便⑤ やわらかい半分固形の便 -
軟便 ⑥ やわらかく、ふわふわした泥状の便 ⑦ 固まりのない水のような便
- 血圧
- 血圧を1日2回測定し、記入します(朝:起床後1時間以内/夜:就寝前)
- 薬の服用について
- 高血圧の薬と便秘薬の服用の有無を記入します
家庭血圧の測り方〈朝の血圧〉

記入例

排便の回数が減ることだけが便秘ではありません。
毎日便が出ていても、
- 「便が硬い」「強くいきまないと便が出ない」
- 「排便後に便が残っている感じがする」
などの不快な症状が続いて困っていたり、日常生活に支障がある場合も便秘であると考えられます。
便秘にはさまざまな症状がありますが、排便時の“いきみ”は便秘患者さんの多くが訴える症状です。



トイレで強くいきむと、血圧が急上昇します。
このような血圧の急上昇は、心臓や血管に大きな負荷をかけるため、心不全、心筋梗塞、脳卒中などの病気が起こる危険度が高まります。
また、血圧の急上昇は加齢に伴い起こりやすくなるといわれており、高齢者はその“引き金”となる排便時の“いきみ”に特に注意が必要です。
日本高血圧学会 高血圧治療ガイドラインでは、「便秘に伴う排便時のいきみは血圧を上昇させるので、便秘予防の指導、場合によっては緩下薬の投与を行う」とされています。
血圧と便秘を一緒にコントロールすることが重要なのです。
便秘や血圧について、ご不明なことがございましたら、遠慮なく医師にご相談ください
参考資料
Ishiyama Y, Kario K, et al.: J Clin Hypertens. 21(3): 421-425, 2019.
日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会:日本高血圧治療ガイドライン
2019,ライフサイエンス出版,2019.
