「お通じが毎日出ない」「トイレで痛みを感じる」「おなかが張ってつらい」…おなかの悩みは人によって違いますが、そもそも、どのような状態が便秘なのでしょうか。また、予防や解消のために必要なことは…?第1回は、便秘の基本的なこと、病院に行く前に日常生活で気を付けることについてお伺いします。
- 1日でもお通じがないと便秘なのでは…?と心配する方もいると思いますが、医学的にはどうなのでしょうか。
- 2017年に発刊された医療従事者向けのガイドラインでは「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」が便秘とされています1)。お通じの間隔はもちろん重要な判断基準ですが、健康であっても毎日排便があるとは限りませんので、毎日出ないというだけで、それだけで便秘と診断されるわけではありません。また、「快適に排便できているかどうか」もポイントの一つなので、毎日あっても排便時に痛みを感じたり、とても硬い便しか出なくて困っているという場合は、便秘と診断されることもあります。
1)「日本消化器病学会関連研究会慢性便秘の診断・治療研究会:慢性便秘症診療ガイドライン2017,p.2,2017,南江堂」 より許諾を得て転載
- 「食物繊維が大事」とはよく聞きますが、それだけで十分でしょうか?
- 食物繊維は、消化管で消化できない食物中の成分の総称で、水に溶けない「不溶性」と水に溶ける「水溶性」があります。不溶性食物繊維は、消化管で栄養を吸収された後に「残りカス」となり、便の量を増やしたり、便を固めるというはたらきがあるため、とても重要です※。
また、便のほとんど、約75%が水分なので2)、水分を十分に摂ることも非常に大切です。食物繊維や水分は、いわば「便のもと」ともいえるので、便秘が気になる場合は、食事の内容が偏っていないか、3食食べているか、水分の量は足りているか、などを見直してみてください。※ただし、便秘の原因には個人差があるので、どういう食事が良いのかについては、
医師や看護師などに相談してください。2)Wyman JB et al.:Gut 19(2):146-150
- 日常生活で、食事以外では何に気を付ければ良いでしょうか。
- 便秘の予防や解消の基本は、食事、運動、そのほかの生活習慣です。適度な運動は腸の動きを活発にしてくれるので、できるだけ歩く、ラジオ体操をする、腹筋を鍛えるなど、できることからやってみましょう。運動ができないときは、腹式呼吸やうつ伏せ寝、おなかのマッサージなどが効果的です。
- トイレを我慢すると良くないというのは本当ですか?
- 食べ物は口から食道、胃、腸を通る間に、消化され、水分が吸収されます。最後に直腸まで届くと、直腸が便を感知してトイレに行きたくなるのですが(排便反射)、ここで我慢してしまうと徐々にこの反射が鈍くなってしまうのです。なるべくトイレを我慢せず、毎日、朝食後などの同じタイミングで行くように、生活サイクルを工夫してみましょう。
セルフケアで解消しなかった場合は病院へ
便秘解消の基本は生活習慣の改善ですが、頑固な便秘の場合、便秘薬を使った治療が必要な場合があります。また、たかが便秘と思っていたら、何か違う病気が隠れていることもあるかもしれません。生活習慣を見直したのになかなか便秘が解消しない、おなかが苦しいのが治らない、といったときは、一度、医師に相談してみましょう。