慢性便秘症
過敏性腸症候群
機能性胃腸症

教えて先生! 知ってるようで知らない「便秘」

千葉大学医学部附属病院消化器内科便秘外来 齊藤景子 先生

第3回 病院では何をするの?

思い切って病院に行くことを決めたものの、何を話せば良いのか戸惑ったり、どんな検査があるのか不安に思うこともあるでしょう。第3回は、病院での問診や検査の具体的な内容をお伺いしました。

※ここでは一般的な問診や検査についてご紹介しています。詳しくは各医療機関にご確認ください。

便秘にまつわるあれこれを確認

問診で患者さんに確認していることを教えてください。

一般的には、排便の回数や便の様子、排便時に気になった症状、食事、運動、トイレの習慣などについて確認していきます。そのほか、何か病気をしたことはないか、便秘薬に限らず飲んでいる薬やサプリメントはないかというのも大事な点です。
また、病院によっては診察室に入る前に問診表へ記入していただく場合もあります。初診は時間がかかることも多いので、余裕をもって受診してください。

高齢の女性の診察中のイラスト

検査結果をもとに治療方針を決定

検査で何がわかるのですか?

便秘以外の病気、たとえば大腸がんや甲状腺機能低下症、糖尿病などの可能性がないかを調べています。調べる方法には、おなかの張り具合を手で確かめる(触診)、おなかを叩いた時の音を聞く(打診)、肛門から指を入れて直腸の様子を確認する(直腸診)などがあります。X線検査は、腸にガスが溜まっているかどうか、便がどこに詰まっているのかなどを確認するためのものです。また、大腸内視鏡検査では、肛門から挿入した内視鏡を使って大腸の中の様子を直接目で確認することができます。こうして調べた結果をもとに便秘の原因を検討して、生活習慣の見直しのポイントや、便秘薬を使うかどうか、どの種類の便秘薬を使うのか、といった治療方針を決めています。

特殊なX線検査やMRIを行うことも

専門病院や大学病院では、何をするのでしょうか。

これまでの検査の結果、「もう少し詳しく調べる必要がある」と判断された場合は、専門病院や大学病院などの設備が整った施設でさらに詳しい検査を行います。たとえば、バリウムと小麦粉で出来た擬似便(ぎじべん)を使い、直腸からどうやって便が排出されるかをX線検査で調べる「排便造影検査」というものもあります。内視鏡では下剤を使って腸の中を空にしますが、排便造影検査は腸の中に擬似便を入れるため、内視鏡ではわかりにくい排便時の様子を確認することができます。また、造影剤の代わりに水を使った特殊なMRI(磁気共鳴画像)検査(シネMRI)を使うと、おなかの中で腸がどういう動きをしているのか、超音波検査よりも詳しく調べることができます。なお、実施する検査の方法は個々の患者さんの状態や施設によって異なります。また、一部の検査は保険適応ではない場合があるので、詳しくは医師に確認してください。

加藤直也先生

加藤 直也 先生

(千葉大学医学部附属病院消化器内科 科長)

大学病院に便秘外来ができたわけ
—千葉大学医学附属病院消化器内科便秘外来

便秘はとてもありふれているにも関わらず、どの位身体に影響があるのかよくわかっていませんでしたが、最近では「慢性的に便秘があると生活の質(QOL)や生存率が低い」というデータ1, 2)が発表されています。また、腸そのものが重要で多様なはたらきをする臓器だということが明らかになってきました。
このように腸に注目が集まっているなか、新しいタイプの薬が次々と登場したり、2017年には「慢性便秘症診療ガイドライン」という医療従事者向けの診療指針が日本で初めて発刊されるなど、便秘治療の状況は大きく変化してきています。「このようないろいろな理由が後押しになって、2018年3月から千葉大学医学部附属病院消化器内科で『便秘外来』を立ち上げることになりました(同科長 加藤直也先生)」。長い間便秘に悩んでいた患者さんが多いため、問診にしっかりと時間をかけており、完全予約制となっています(2018年10月現在)。「問診では、排便の回数や便の様子といった基本的な項目のほかに、便秘のために『ストレスを感じた』『トイレに長時間こもるのが恥ずかしかった』といった精神面や生活の質に影響が出ていないかも詳しく確認しています(齊藤先生)」。必要に応じて排便造影検査やシネMRIといった検査を行うほか、「他の診療科や臨床栄養部とも連携しながら診療を行なっています(加藤先生)」。全国でもまだ少ない試みですが、「便秘に苦しんでいる方とじっくり向き合い、腸にやさしい治療をお届けするという、当初の目標を維持できるよう、尽力していきたいと思います(加藤先生)」。

1)Wald A, et al. Aliment Pharmacol Ther. 26(2): 227-236, 2007.
2)Chang JY, et al. Am J Gastroenterol. 105(4): 822-832, 2010