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便秘何でもQ&A

高齢者の方の便秘の予防や改善のために、
どんなことに注意すれば良いですか?

高齢者の方の便秘の予防や改善のために、どんなことに注意すれば良いですか?

1.高齢者ほど便秘に悩んでいる

自分が便秘だと自覚している人は、厚生労働省が行った国民生活基礎調査によると、男性が2.5%、女性が4.4%いると報告されています(図1)1)
60代前半までは便秘に悩んでいるのは女性の方が多いのですが、65歳以降は男性も増えてきます。特に70歳以上になると男女ともに急激に「自分は便秘である」と思う人が増え、70代後半では男性の方が多くなっています。

図 1 便秘を自覚している日本人の年齢・性別分布


厚生労働省「令和元年国民生活基礎調査」

2.高齢者はなぜ便秘になりやすいの?

便秘を疑ってみる基準は、毎日排便があっても「便が硬い」、「強くいきまないと出ない」、「排便時に苦痛がある」、「排便後に便が残っている感じがする」、「日常生活に支障がある」場合です2)
たとえば、排便回数が少ないからといって必ずしも便秘とは限りません。

要は、「排便を十分に快適にできているかどうか」ということになります。

年齢とともに便秘になる人が増える主な原因2)をご紹介します。

食が細くなる

年をとるにつれ食事量が少なくなっていくため、食物繊維などの栄養素の摂取量も減っている可能性があります。しかも、60歳を過ぎると善玉菌が徐々に減り始めて、悪玉菌が増えていくので、腸内細菌のバランスが崩れやすくなっています3)
食物繊維は硬くなった便を軟らかくしたり、便のかさを増やすはたらきがあり、腸内環境を整える善玉菌のエサにもなっています。
つまり、食事量が減ると便秘になる可能性があります。

緊張で腹痛を起こしている女性のイラスト

水分摂取が不足になりがち

高齢になってくると、のどの渇きを感じにくくなったり、トイレが近くなるのを気にして水分を摂るのを控えたりして、体内の水分不足や脱水症状を起こしやすい傾向にあります。
体内の水分が不足してくると、腸管の水分吸収量が増えて、便中から水分が減り、腸内をスムーズに移動できるやわらかさのある便が作りにくくなってしまいます。

筋力や便を出す力が低下

年齢とともにからだの機能は低下してくるため、腸の機能も鈍くなります。また、食事量の低下や運動不足によって筋肉量も低下しがちになります。
便を出すための腸のぜん動運動や腹筋が弱くなると、便が腸内にとどまる時間が長くなってしまうため、便から水分が必要以上に減ってしまい、硬い便となってしまいます(これを弛緩性便秘といいます)。

持病や飲んでいるお薬の影響

高齢者の場合、持病(基礎疾患)の1つや2つはある人が増えてきます。ですから、服用しているお薬が原因で便秘となることがあります。特に抗コリン薬、制酸薬、利尿薬、医療用麻薬、抗精神病薬などは、腸のぜん動運動を抑制させる作用があるので、便秘になることがあります。

サルコペニアやフレイル

加齢や食事量が低下して筋肉量が減ることで、からだの機能が衰えた状態を「サルコペニア」といいます。
また、サルコペニアによって活力がなくなると、からだだけでなく心のはたらきも衰えた状態となります。これを「フレイル」といいます。
フレイルの人はそうでない人よりも便秘の重症度が高いと報告されています4)。また、サルコペニアがある人は便秘が重症化しやすいともいわれています5)

3.便秘を予防、改善するためにできることは?

便秘を予防、改善するには腸内環境を整えて、腸のはたらきをよくする食事や生活習慣が大切です。

目安にしたい 1 日の食事量

農林水産省の「シニア世代の健康な生活をサポート 食事バランスガイド」
(https://www.maff.go.jp/j/balance_guide/b_sizai/attach/pdf/index-56.pdf)を参考に、主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品・果物をバランスよく摂るために、どんなものをどれだけ食べればよいかをご紹介します。
なお、ここでは料理は、「つ」という単位で数えます。

主食(ごはん、パン、麺類)

毎日の生活のエネルギーのもととなる炭水化物などの供給源です。

1 日の目安は「4 ~5つ」(ごはん(普通盛り)だったら 3 杯程度)。

=ごはん軽く 1 杯=おにぎり 1 個 = 食パン 1 枚

=うどんやそば 1 杯=スパゲッティ 1 皿

副菜(野菜、きのこ、イモ、海藻料理

からだの調子を整えるビタミン、ミネラル(カリウム、リン、鉄など)、食物繊維などの供給源です。

1 日の目安は「5 ~ 6 つ」(野菜料理を 5 皿程度)

=野菜サラダ(小皿)=具だくさんの味噌汁=おひたしや煮物の小鉢
=きのこのバター炒め

=野菜の煮物や野菜炒め(中皿)=芋の煮っころがし(中鉢)

主菜(肉、魚、卵、大豆料理)

血液や筋肉などを作り、体力や免疫力の維持にも役立つたんぱく質などの供給源です。

1 日の目安は「3 ~ 4 つ」(肉・魚・卵・大豆料理から 3 皿程度)

=冷やっこ=納豆=卵 1 つ分の料理(目玉焼きなど)

=魚料理 1 人前(焼き魚、魚の天ぷら、まぐろとイカの刺身など)

=肉料理 1 人前(ハンバーグ、豚の生姜焼き、鳥のから揚げなど)

牛乳・乳製品

人に必要な栄養素をバランスよく含み、とくにカルシウムの供給源です。

1 日の目安は「2 つ」(牛乳 1 本程度)

=スライスチーズ 1 枚=ヨーグルト 1 パック=牛乳瓶 1 本(200ml)

果物

ビタミン C、カリウムなどの供給源

1 日の目安は「2 つ」(牛乳 1 本程度)

=みかん 1 個=リンゴ半分=かき 1 個=ブドウ半房=桃 1 個=100% ジュース
(200ml)

こまめに水分を補給する

のどが渇いていなくても、いつの間にか水分不足や脱水症状が起きているかもしれませんので、
こまめに水分補給をしましょう。1 度にたくさん水を飲んでも排泄されてしまうので、「こまめ」が重要です。
朝起きた時と寝る前、食事時、食事の合間と、つづけやすい水を飲むタイミングを習慣づけて
みましょう。

排便タイムを決める

便意があってもなくても、毎日時間を決めて、トイレに行く習慣をつけましょう。

便意をガマンしない

「トイレに行くのが面倒」、「外出中だから」などと、便意をガマンしてしまうと便が出にくくなる原因となります。
便意を感じたら、ガマンせずにトイレに行きましょう。

できる運動をコツコツと

適度に運動すると腸が刺激されて、はたらきを活発にしてくれます。また、筋力が低下するのも予防できますので、ウォーキングなど、日常的にできる運動をできる範囲で続けましょう。

快眠ができる工夫をする

睡眠と排便は関連しています。年をとると睡眠時間が短くなってきますが、日中元気に活動できるならぐっすり寝られている証拠です。もし、寝ても疲れが取れないなどがある場合、昼寝をやめる、寝具を変える、夜は眠くなってから寝床に入るなど、少し習慣を変えてみると快眠につながりやすくなるでしょう。

まとめ

高齢者ほど多くみられる便秘。予防、改善するためには、食事と水分をしっかり摂るようにして、排便するために必要な筋力の低下や便のかさを減らさないようにしましょう。
快便のサポートとして、適度な運動、快眠できる習慣のくせづけも大切にしてください。

  • 参考
  • 1) 厚生労働省「令和元年国民生活基礎調査」
  • 2) 日本消化管学会 編:便通異常症診療ガイドライン 2023- 慢性便秘症
  • 3) Odamaki T, et al. BMC Microbiol 2016; 16: 90.
  • 4) Asaoka D, et al. Intern Med 2020; 59: 1677-1685.
  • 5) Asaoka D, et al. Biomed Rep 2021; 14: 2.

おなかのはなし .com でも、さまざまな便秘解消のためのお料理レシピをご紹介していますので、こちらも参考にしてください。